QS 世界大学ランキングから見えてくること
◇QSによる世界大学ランキング(2012)が発表されています。トップはマサチューセッツ工科大学で、2009年以降首位を守ってきたケンブリッジ大学は3位に後退しました。
◇今回のランキングではMITに限らず工科系の大学が全体的に高い評価を得ていたようです。インペリアル・カレッジ・ロンドンは昨年同様6位ですが、カリフォルニア工科大学は、昨年12位→今回10位、チューリッヒ工科大学は、昨年18位→今回13位などとなっています。
◇QSのサイトでは、アジアの工科系大学にも注目しており、香港科技大学やシンガポールの南洋理工大学、また90位から63位に順位を上げた韓国のKAISTを急成長株として紹介しています。
◇日本の大学に目を転じますと、東京大学は世界ランキング30位、京都大学は同35位に入っています。ちなみに東大の2007年以降のランキング推移は次の通りです。
17位(07年)→19位(08年)→22位(09年)→24位(10年)→25位(11年)→30位(12年)
◇確実に下降の一途を辿っています。ランキングごときに一喜一憂しなくてよいという考えを持つ人も、このランキングが、国力の表れであるかのような見方を目にすると気楽に構えてはいられなくなるのではないでしょうか。
◇世界ランキングとは異なる指標で出されているアジア地域でのランキングにおいて東大は8位で、北京大学の後塵を拝している格好となっていますが、このことについてQSサイトでは、日本がGDPで中国に追い抜かれたことを反映していると書いています。
◇東大を初め、日本の他の大学も順位を落としている主要な原因は、国際化の指標が低いことにあります。留学生の数とか、外国人の教員がどれくらいの比率を占めているかといった観点において評価が低いのです。東大の秋入学の議論はこういった状況を打開するためのものであることは明らかでしょう。
◇しかし、東大を初めとする日本の主要な大学がもし英語ですべての授業を行うようにでもなれば、それはますます英米の大学のアドバンテージを確固としたものにしてしまうことでしょう。ある学問分野においていったんスタンダードとなれば、それは人材確保などの面からも産業界における優位性につながっていきます。
◇佐伯啓思氏が『経済学の犯罪』で、アメリカ経済学が獲得した影響力が、やがて現実の経済的覇権につながっていったと指摘しているように、学問領域でスタンダードを形成することは現実世界の覇権を握ることに大きく関係してくるのです。
◇そのような意味において、世界大学ランキングに対して私たちはもっと警戒する必要があるかもしれません。