2017年度中学入試の動向―思考力入試の拡がり

思考力入試は、中学入試で今や大注目のトレンド。2016年度入試のときに毎日新聞や朝日新聞が取り上げたこともあり、2017年度ではさらに思考力入試やそれに準ずる形式の入試が拡がっています。

首都圏模試センターでは、4科・2科受験以外の方式の入試制度を一覧にしてWEB上に掲載しています。 この記事によると、首都圏の私立中学で「適性検査(思考力・総合・自己アピール・PISA)型入試」を実施した学校数は、53校(2015年)→86校(2016年)→120校(2017年)と大幅に増加しています。それに伴い出願者数もぐんぐん増え、2016年入試では7,000名を超えていたそうですから、単純計算だと今年は12,000名ほどにまで達することになります。

これはもう一大勢力であり、これだけ多くの層が存在するとなれば、学校選択の指標が多元化せざるを得ません。出題で問われる力が異なるのに、同じ指標で測定できるわけがないからです。

従来の偏差値的尺度で比較するのに適した学校群はもちろん存在し続けるでしょう。思考力入試を行っている学校も4科入試も行っている場合がありますから、そのような尺度の中で相対的位置の上昇下降をめぐる競争はなくならないはずです。

一方で、自己アピールや創造的思考力など、従来の試験ではなかなか測定できない能力については、偏差値的尺度以外の観点から評価していく必要が出てきます。これらは従来、学校の中に入ってみないとなかなか分からない部分だったわけですが、思考力型入試の広がりによって、その学校が求める生徒像、すなわち教育の質が見えやすくなってくるはずです。

入試問題は学校の顔と言われるほど、その学校の教務の質が表れ出てくるものです。2017年以降の中学入試の世界は偏差値評価そのものが相対化されていくのではないでしょうか。そうでないといけないと思います。

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