「古代エジプト展」で思ったこと

Taxonomy upgrade extras: 

◇「大英博物館」の名前に釣られて「古代エジプト展」を見てきました。

◇大英博物館が所蔵する古代エジプト文明の有名な遺跡といえば「ロゼッタ・ストーン」や「ファラオ像」ですが、今回森アーツセンターギャラリーで展示されているのは、「死者の書」が中心です。特に「死者の書」の中でも最長と言われる「グリーンフィールド・パピルス」が見どころで、古代エジプト人が死後の世界をどのように考えていたかを探る手がかりを提供しています。死者が再生し復活するという考えや、死後の世界で最後の審判が下されるといったモチーフがこのような「書」としてこの時代にすでに表れていることに興味をそそられました。

大学受験を控えている世界史選択のある高校3年生に「死者の書」の話をしてみたところ、つい最近の模試で出題されたとのことでした。「古代エジプトの『死者の書』にはオシリス神による審判が描かれている」といった正誤問題であったようです。展示を見てきたばかりの者にとっては、この問題は基礎的な知識を問う問題ですが、膨大な暗記事項と格闘している多くの高校生にとっては、重箱の隅をつついたような問題と映るのではないでしょうか。いずれにしても、世界史の授業がそういう断片的な知識の集積で終わってしまうのは本当にもったいないことだと感じます。

◇教室の中だけで授業を行うのではなく、このような博物館への学習ツアーをもっと活用してはどうかと思います。もちろんレポートのテーマの掘り下げ方や調べる方法については先生からのアドバイスが必要となるでしょう。そのアドバイスや授業の設計が先生の腕の見せ所と言えます。

地理と歴史を統合して「世界」という科目を設置している麻布中や、「サイエンス科」という科目横断的な授業の中で学習ツアーを実施しているかえつ有明中など、そのような試みを行っているグッドスクールはありますが、もっともっとそのような学校、あるいは先生が出てくることが必要です。さらに入試問題の出題も変わることで、生徒の学びも変わってくることでしょう。それが10年後、あるいは20年後の日本の文化的な豊かさにつながってくるのだと思います。