「ビジョンで選ぶ中高一貫校首都圏版2013」
◇経済誌などで取り上げられる中高一貫校が合格実績という出口重視なのに対し、学研から出版されている「ビジョンで選ぶ中高一貫校首都圏版2013」は、大学合格実績以外の中高一貫校の魅力、「教育の中身」に着目しているという意味で、良心的な編集と言えます。
◇ただ、数々の教育の特色を、大学合格ビジョンと人間形成ビジョンという二つのカテゴリーに分類してしまったのは、少し残念です。グッドスクールにおいて、様々な教育の取り組みは、先の二つのカテゴリーに分けることはできず、むしろ両方の側面を併せ持っていると言えるからです。
◇それはともかく、編集の方向性は21世紀型教育を意識しており、グッドスクールがいくつも取り上げられています。
◇思春期を含む重要な人間形成期となる6年間をどのように位置づけるのかは、中高一貫校の大きな特色であり、学校のカリキュラムは教科ごとの学習項目の配列といった意味合いだけでなく、教科相互の関係や行事との連動など、生徒の人間形成に大きな影響を及ぼします。記事では、共立女子や佼成学園女子の特色あるカリキュラムが、それぞれ渡辺校長先生と江川教頭先生のコメントとともに紹介されています。
◇成長のプロセスをどのようにイメージするかということが学校の特色を作り出すということで言えば、男女別学に舵を切ったかえつ有明なども、生徒の成長プロセスの違いをカリキュラムに反映させているグッドスクールの一つです。
◇特徴的な体験学習もいくつかレポートされていました。中でも聖学院が実施しているタイの研修旅行は印象的です。チェンマイの山間部にある町の孤児院で20名ほどの子どもたちと10日間寝食をともにするというのです。しかもこのプログラムを聖学院は1987年から続けているというのですから驚きます。子どもたちが自分の進路を決定する上で、このような体験が大きな影響を与えるのは想像に難くありません。
◇私立中高の教育の「厚み」というのは、実際に訪問してみて「はっと」気づかされることがよくあります。下の写真は、先日佼成学園女子に伺ったときに、エントランスに飾ってあった高校2年生の作品です。同校は「英語の佼成」で知られていますが、実は書道も全国大会レベルです。全国大会はともかく、さりげなくアートが溢れている環境というのは生徒の感性も磨かれていくのでしょう。つくづくそう思います。