かえつ有明 人気の秘密
◇首都圏の中学入試がいよいよ始まります。出願倍率を見てみると、このサイトでも何度かご紹介しているかえつ有明は、共学校の中でも躍進している学校の筆頭と言えるでしょう。
表は、 ホンマハヤト氏 私立学校研究サイトより
◇この人気の秘密は何でしょうか。それは、一方で大学進学実績をきちんと出しながら、受験指導だけに還元されない、多様な教育活動を実践していることにあります。しかし、この場合の「多様」とは、各自が好き勝手にやるのを放任するということでは決してありません。それぞれの生徒や教師が関わり合い、問い返しながら「多様」なあり方を承認していくのです。かえつ有明で言われているクリティカルシンキングは、それを可能にする思考様式を意味しています。
◇これが21世紀において決定的に重要な能力であるのは、今さら言うまでもないでしょう。それは、今世紀の特徴がネットワーク社会であることによります。ネットワークが、単なるコネクションと異なるのは、それぞれの関係が中心を持たずに開かれている、という点です。オープンであるためには信頼がベースにないといけません。そして信頼が何に由来するかと言えば、多様な回路が存在していることによるのです。固定的で一方的な関係ではなく、流動的な役割で双方向的な関係を築くことが大切です。Facebookをイメージすれば、信頼のネットワークを広げるために、そのような能力が必須であることは明白でしょう。
◇アメリカでは、広告などに求人が掲載される仕事というのは20%に過ぎず、80%の仕事は口コミによる紹介だそうです。日本では就職マーケットが硬直していること(すなわち売り手と買い手と仲介者がそれぞれの期待されている役割を固定的に果たそうとしていること)がそのままマーケティングにおける遅れにつながっているように見えます。フィリップ・コトラー氏が『マーケティング3.0』で言うように、売る側が買う人を消費者として固定的に捉える時代は過去のものです。これからのリーダーシップというのは、信頼を醸成しながらネットワークを広げていける、オープンマインドとクリティカルな思考に裏付けられたものであるはずです。
◇そう考えてみると、これまでいくつかの学校を訪問したり取材したりしてきた中で、21世紀型教育を実践する学校には、確かにフラットでオープンな雰囲気がありました。広尾学園や土浦日本大学中等教育学校、文化学園大学杉並、佼成学園女子、富士見丘、共立女子などは、いずれもそのような雰囲気を漂わせている点で共通しています。
◇今年の中学入試において、21世紀型教育を実践するかえつ有明に人気が集まっているのは、時代をキャッチするセンサーが首都圏においてきちんと働いていることの証左だと言えるかもしれません。