かえつ有明 卒業式−人生の航路を育む教育

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かえつ有明では3月1日(土)に卒業式が行われた。今年もまた大学合格実績を伸ばしているかえつ有明であるが、生徒一人ひとりが見つめるのは、もっと遠大なる未来と、この学校で過ごした6年間のかけがえのない思い出であった。

在校生や保護者の拍手に迎えられ、高校3年生が入場。どの生徒もふだんより大人びた表情をしている。

保護者もクラス担任も、生徒の成長した姿を誇らしげに見守る。

校長先生、そして来賓の方によるはなむけの言葉、さらに在校生による送辞と、卒業式はクライマックスへと向かっていく。

圧巻だったのは卒業生答辞である。

3年前の2011年、中学の卒業式は東日本大震災の影響で一時中止の危機に追い込まれた。しかし、自宅待機などの混乱した状況の中にあって、可能なかぎり心のこもった卒業式が行われたことへの感謝を語り、今ここで高校卒業式に出席している生徒、保護者、先生方全員を一気に共通の思い出に導いた。

ヨーロッパ修学旅行での感動、それと同時に自覚した日本人としてのアイデンティティ、あるいは、体育祭で「5段タワー」を奇跡的に成功させ、全員がクラスを越えて分かち合った喜びなど、仲間と過ごした時間をありありと言葉で再現してみせる。

一方で、いまなお27万人が避難生活を余儀なくされている東北の被災地の状況や、中東やシリアで起こっている問題にも触れ、日本や世界の未来をよりよくするために、ひとり一人が行動を起こすことの重要性を訴えた。

驚くほどの力強さに満ちたスピーチは、言葉の力に触れることで締めくくられた。ケンブリッジでの英語研修やアメリカ留学で、相当な英語力を身につけてきたであろう彼女自身が、英語以上に日本語がはるかに大切であることを静かに語った。それは伝達のツールにとどまらず、歴史や人々の思いが織り込まれているからだと。世界を考える際に地域特有の言葉や伝統があることを思い起こさせてくれるからなのだと。

そして、生徒が胸につけているバッジに話を転じると、校章の色が意味する「希望と夢」「理性と平和」、さらに、校章のデザインである船の帆が意味することに触れ、自分たちは未来に向かって帆を張って進んでいく船であるという明確イメージを言葉として定着させてスピーチを結んだ。

この生徒は早稲田大学の国際教養学部に進学するということだ。世界で活躍するにふさわしい国際教養をさらに身につけ、未来を切り開いていくに違いない。そういう価値を大切に育てる学校がかえつ有明なのである。