首都圏模試センター主催「入試総括コラボミーティング」

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2月16日(月)2015年度中学入試の象徴的存在となった三田国際学園にて、首都圏模試が入試総括を行った。中学入試に関する各方面のエキスパートがそれぞれの得意な領域をシェアするという、新しい試みのミーティングであった。

三田国際学園(写真提供:本間教育研究所)

会全体の趣旨や流れ、それから情報提供者の顔ぶれについては、本間勇人氏の私立学校研究ブログに詳しく掲載されているので、こちらをご参照いただきたい

入試総括コラボミーティングを主催した首都圏模試センター幹部(中央が代表取締役社長の北林氏、左は取締役統括マネージャーの山下氏、右は取締役教務情報部長の北氏:写真提供 本間教育研究所)

本ブログでは、自分にとっての情報整理の意味も含め、ミーティングで私がお伝えした帰国生入試情報を少しご紹介する。

まず、下の表は、2015年度の帰国生入試において出願者数を増やした学校のリストである(数字データ元は日能研)。出願者数の合計が前年比で25%以上増加した学校をピックアップした(ただし、今年度の出願者数が5名以下の学校は除いている)。昨年帰国生入試を実施していない学校については、出願者数が15名以上の学校をピックアップした。

これらすべての学校に共通する要因を探すのは困難だが、大きな傾向として見えるのは、大学受験指導重視型の学校よりも、21世紀型教育や英語重視型および思考力型入試を実施している学校の方に人気が出てきているということである。

特に、本ブログでもたびたび取り上げている21世紀型教育を創る会の学校(21会校)のうち、富士見丘、文化学園大杉並、かえつ有明、工学院大附属、桜丘、順天、三田国際学園、の実に7校が顔を出していることは注目に値する。

もちろんその理由は単純にこうだと言い切れるものではないし、早急に結論を出すべきでもないと思うが、帰国生にとっての中学受験は、国内の受験生とは状況が大きく違うということは頭に入れておいてよいだろう。中学受験をする帰国生は、大きく次の3つのケースのいずれかであると考えられる

一つは帰国枠を利用できるかどうかに関わらず、何があっても私立中学受験をしようと決めている保護者の場合である。この層は、海外では中学受験の準備が十分にできないということに不安を感じ、たとえ父親が海外勤務の途中であっても、小学4年生か5年生の時点で母親と子どもだけで日本に戻るということがよくある。したがって、受験対策も国内生と同様に中学受験の塾に通いつつ、場合によっては英語だけ別の塾で対策を行うこともある。

二つ目のケースとしては、6年生になって急に帰国が決まり、これまで中学受験の対策を特にしていなかったため、英語+面接、あるいは算数+国語といった比較的科目数の少ない中学を受験せざるを得ない場合である。

三つ目のケースは、すでに4年生あるいは5年生の時に帰国しており、無理に塾通いをさせたくはないが、資格上、帰国枠を受験することはできるので、自分に合った(あるいは海外での学習体験を活かせるような)学校があるのであれば私立中学を受験させたいと考えている。この層の人たちは、二つ目のケースと同様、英語+面接などで受験できる学校を中心に中学受験を考える。

塾からの視点、あるいは大学進学実績を重視する見方では、一つ目のケースしか目に入らず、帰国生はみな難関大学に進みたいと思っているはずだという思い込みでマーケットを見てしまっている可能性がある。二つ目と三つ目のケースに入る帰国生のニーズに対応できないのであるが、21世紀型教育を打ち出す学校は独自のアンテナで、こういった層の親にアピールをしている可能性が高い。

海外のインター校や欧米の現地校に慣れ親しんだ保護者から見れば、21世紀型教育で行われるアクティブラーニングがむしろ標準なのであって、日本式の受験塾で学んでいるような暗記型は子どもが潰されてしまうことを恐れて通わせられない。であるから、必然的に塾を飛び越えて、直接そのような学校を探そうとしているのである。

そのような思いをかなり言葉足らずで、発表させていただいたが、会の最後を締めくくる際の大橋先生のお話を聞いて、やはりと合点のいく思いがした。

2015年入試における三田国際学園の成功について尋ねられた際に、大橋学園長はこれまでの準備を静かに次のように語ったのだった。

保護者のお話に真剣に耳を傾けていれば学校の目指すべき方向は自ずと見えてきます。なぜなら、中学受験をさせる保護者こそ今の社会を苦労しながら活躍されている方々で、これからの世界で子どもが生き抜くために何が大事になるのかということについてよくわかっているのですから。

三田国際学園の大橋理事長(写真提供:本間教育研究所)

三田国際学園の2015年のブレイクが単なるブームでないことは、来年実証されることであろう。これから私立中学受験を考える方は、三田国際学園・工学院大学附属・かえつ有明の三つの私立共学校がいかに真剣に新しい教育と取り組んでいるかということが実際に確認できる「進撃の21世紀型教育:中学入試セミナー」に参加してみるとよいのではないだろうか。