かえつ有明、新高校クラスのオリエンテーション始まる
4月4日(土)にかえつ有明高校新クラスのオリエンテーションが実施された。送られてきた案内によると「体→心→関係性」という4日間のプログラム。初日のこの日は「声を響かせるワーク」とある。これまで1年間かけてかえつ有明の先生方が議論してきたクラスの初日である。ただのオリエンテーションであるはずはない。
会場のKALC(かえつアクティブラーニングクラスルーム)に行ってみると確かに、生徒も先生方もみなジャージ姿でリラックスした様子である。椅子も机も取り払われていて新クラスの生徒と先生が順不同の車座になる。
オリエンテーションは新クラス担任となる金井先生の挨拶で始まった。わずか3分ほどの話であったが、その中で金井先生は、「みんなが幸せになるためのクラスでありたい」とメッセージを投げかけた。そして、遠くにあるように見える「幸せ」という目標が実は「今この瞬間」の積み重ねであるのではないかと問いかける。
幸せは社会や環境に依存するが、社会や環境をどう捉えるかは自分の受け止め方次第。しかし、一人ひとりの幸せが異なることを前提にすれば、他者への眼差しなしにこのクラスの幸せはあり得ない。さりげない問いかけの中で、考えていくべき種を植えつけ、各自の目標設定を促すというのは、金井先生が得意とする手法。こんな風にオリエンテーションはスタートした。
クラス全員が初めて顔を合わせる日に心の壁をどうやって取り除くか。アクティブラーニングの名手である佐野先生は、プロのシンガーソングライターで、体(骨)を響かせる発声法のトレーニングを行っているゲストを招いた(私は迂闊にも後で知ったが、かつて「ほっとけないよ」という大ヒット曲を放った楠瀬誠志郎さんであった)。
自己紹介という形にすると、どこかよそ行きの自分を演出してしまいがちだ。それよりも声を出すという行為を通して、自分が知らなかった「新しい自分」「新しい世界」に気づく。そんな狙いがあったのではないか。
声のトーンというのは、表情や姿勢などと同様、心の状態が知らず知らずに出てしまうところだ。自分の声の状態を周囲からフィードバックしてもらうことで、ふだん自覚していない自分を知ることができる。講師の楠瀬氏がオリエンテーション終了後に話していたのは、大人は自分を社会的な役割でガチガチに固めているが、生徒は、まだそれを固定化していない。その分少しのトレーニングであっという間に変化が起こると。
自分が思っていることを自信を持って相手に届ける。新クラスのコンセプトの行き先には、「I think …because…」 やクリティカルシンキングスキルが包含されている。ただし、論理の根底をなす感性の部分を形成しておかないと、論理性も機能しない。「この場所が好きだ」と思える環境づくりは、ロジカルでクリティカルな学びの基層となるわけだ。
「自己の幸福を追求することと多様な価値観との共生」、かえつ有明高校新クラスは、新しい挑戦を開始したのである。