写生の伝統とリベラルアーツ

前回のブログでミュージアムと教育について書いた後、美術教育について考えていたら、公園で写生をしている小学生のグループに出くわした。

昔自分が小学生だった頃が蘇り、そういえば日本の美術教育には写生があるなと思って少し調べてみると、写生の伝統は鎌倉時代にまでさかのぼることができるようだ。しかし盛んに行われるようになったのは江戸時代で、そこには朱子学の思想が影響しているとのこと。自然をそのままに描こうとする写生が盛んになった背景には、客観主義的な思想である朱子学が関係しているらしい(河野元昭監修「日本美術史入門」による)。

狩野探幽から尾形光琳、さらに円山応挙の写生主義へとつながる系譜というのも興味深いが、朱子学と写生の伝統のつながりというのも、とても面白い。美術の授業を違う観点から再構成できる可能性が広がってくる。しかも、これらの画家の作品は幸運なことに東京国立博物館で直接見ることができるわけだから、ミュージアムを活用する価値も出てこよう。

美術や音楽などを「技能」教科から解放するためには、指導者がリベラルアーツ的な視点を持つか、TOKのように、知に対するメタ的な問い(Knowledge questions)を発していく必要があるように感じる。この点についてはいずれまた書きたい。