就活の功罪-大学3年生の就活取材を通して

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◇大学3年生は就活の真っ最中です。かえつ有明のチューター3名から就活の様子を取材しました。三者三様の戦略が感じられ、興味深かったのと同時に、就活の功罪についても考えさせられました。

  

◇コンサル業界を志望している慶應義塾大学の男子学生に言わせると、ES(エントリーシート)は、ふるい落としのためのものなので、一応テンプレートを用意し、企業によって多少のアレンジを加えて提出、必要以上の時間をかけずにとにかく数多く出す、とのこと。

 

◇時間をかけてESを書いてもじっくり見てはもらえないことを知っていても、それをぼやくより、膨大なESチェックに忙殺されている大企業の人事部の担当者に対する想像力を働かせているわけですから、厳しい就職戦線で、冷静で客観的な分析力を鍛えていると言ってよいでしょう。

 

ESについてのスタンスは、金融業界志望の慶應の女子学生も、商社志望の東大男子学生も同意見でした。ただし、WEBテストの対策では意見が分かれました。慶應の女子学生はWEBテストの対策を重視するというのに対して、東大の男子学生は、WEBテスト対策はしても意味ないのでは、との突っ込み。すると女子学生は「それはあなたが数理処理を得意としているから。私は苦手なのでSPI対策はしっかりやらなければいけないの」とのこと。

 

◇彼らのやり取りを聞いていて、つい半年前まで「そろそろ就活で気が重いです」などと学生気分でいた彼らが、社会人としての基礎的素養をいつの間にか身につけていることに驚きました。企業に勤めている社会人との接触が彼らを精神的に成長させているわけです。

 

◇コンサル業界を志望している前述の慶應男子学生は、徹底してフェルミ推定の対策をしています。彼の口からよく出てくるのは「論理」。論理の積み重ねで結論を出すことが求められているそうです。


◇慶應女子学生が使っていたキーワードは「心理戦」。担当者は、他の会社での面接状況などをガンガン尋ねてくる。それによって学生の「本気度」を試そうとしている。そこは、正直なだけでは駄目ですとのこと。  

 

◇最近の一般的な傾向として、女子の方が心理的にタフであるような気がしますが、「就職の鍵は心理戦」ですと言い放つ彼女には、冷静な自己分析に基づいた強かさを感じました。

 

◇東大の男子学生は、二社程度しか考えていないとのこと。駄目なら大学院に行きますとあっさりしていました。それは彼の自信に基づいているのでしょうか。確かに商社についての分析はかなりされているようで、最近の商社の好景気の背景にある資源高については、これからは利幅が小さくなり期待できないこと、むしろ三国間貿易などを事業の中核に据え、日本の経済状況に依存しないような企業形態が求められていることなど、まさに教科書的な解答が返ってきました。

  

慶應男子学生は「論理性」アピール戦略、慶應女子学生は「柔軟性」アピール戦略、東大男子学生は「志向性」アピール戦略と、それぞれのポジショニングが見えて興味深かったわけですが、一方で、東大の彼からは、こんな話も聞きました。「アメリカに留学し、シリコンバレーにインターンシップに行った知人は、就職せずにアメリカで起業しました」と。

 

◇就活は、学生の社会性獲得に確実に寄与していますが、ポジショニングの選択は「就職」というゴールのためだけに行われるので、「どう生きるか」というゴール設定のためのポジショニングが選択肢から失われてしまうわけです。