【私立中学を受験するということ 1】 ー 首都圏の中学入試がスタート
2月1日は首都圏の中学入試の初日。今年は日曜日にあたっていたが、例年通り、一部のキリスト教系の学校以外はほとんどの私立中がこの日から入試をスタートさせた。早朝から電車の中に受験生らしき子どもと母親の姿を見かけた人も多いのではないか。
かえつ有明の入試応援風景(2月1日午前)
このブログでは私立中学校に限らず、大学受験に関することや海外の教育事情まで広く教育情報を掲載しているが、今回は改めて私立中学校を受験する意義というのを書いてみたい。もちろん受験生の保護者からすれば、何を今更というくらいに当たり前の話だろうが、私自身、時々知人から、「なぜ私立中学受験の応援をしているの」と問われることもあるので、一度まとめておくことも悪くないかと思いたった次第である。
中学受験が、高校受験と違うのは、どうしてもしなければいけない受験ではないということだ。だから基本的にしなくてよい、不要なものだ。実際、私立中学受験が盛んな地域というのは、首都圏や関西圏、それに有名な私立中高一貫校がある地方都市くらいなもので、小学6年生全体の3%程度に過ぎないということである。
ところが、この私立中高一貫校を卒業した生徒が、難関大学合格の占有率が高いと雑誌等のメディアで宣伝されるようになったことで、中学受験ブームがやってくる。バブル景気だったこともあり、首都圏を中心に中学受験は一気に大衆化した。
このあたりから中学受験塾による難関私立中学の合格実績競争が激化する。私はそのころ某中学受験塾の教務に所属していたが、2月1日からの入試問題解きは1年の中で最高に盛り上がる時であった。朝早く入試応援に行き、本部に戻ると、あちこちから入手された入試問題が集まってくる。どこよりも早く誰よりも早くその問題をチェックし、教え子に伝授してきたことが通用する内容なのかどうか確認せずにはいられない。そして何よりも良問に出会うと、その出題者の知的レベルをリスペクトし、同じ教務のメンバーとその出題意図について議論をするという日々であった。
中学入試問題というのは、出題範囲を小学校での履修範囲に制限しながら、知的好奇心をくすぐる良問が多く、なかでも麻布中学の問題は、2月1日がどんなに忙しくても必ず目を通さないといられないほど、インパクトのある出題であった。それは今も変わらない。
中学受験を高校受験の前倒しのように考えているとしたら、それは大切な点を見逃すことになる。高校受験では中学の学習指導要領範囲内の知識を試される問題が大半であり、問題も大方似たり寄ったりである。中学受験の場合、そもそも小学校で履修する知識というのは、ごくわずかであるから、思考力が問われる問題にならざるを得ないのである。
今年はその特長を鮮明に打ち出した試験を「思考力テスト」と名付けて実施する学校が増えた。聖学院・かえつ有明・工学院大学附属・富士見丘・桜丘・聖徳など、21世紀型教育を推進している学校が中心だ。この流れは今後ますます増えていくことになるだろう。なぜかといえば、それは中学入試の本質であるからなのである。
桜丘中学にて。試験会場に向かう子どもたちと、待合室に貼られた掲示物(2月1日 午後)