Eテレ「いまなぜ高校が変わるか」のインパクト
今年8月に「いまなぜ高校が変わるのかー大学入試改革の真のねらいを問う」というシンポジウムが開催され、先日(10月3日)その模様がNHKのEテレで放映された。
ここ数年先進的な教育に取り組んでいる高校として、広尾学園やかえつ有明、明星、大妻などの実際の授業での取り組みが取り上げられる一方、シンポジウムのパネリストには、東京工業大学学長、早稲田大学総長、開成の校長それに三菱商事の役員といった、どちらかと言えば従来の偏差値ピラミッドにおいて上位にいないと入れない学校や組織の代表が集まっていた。
バックミュージックもあって華やかな授業の様子に対し、暗めの背景で壇上にパネルを組んで、高校での新しい授業の試みについて論評を加える先生方という構図は、21世紀の教育に対する従来的な枠組みからの分析というコントラストを鮮明に映し出していた。
後援に文部科学省が入っているにもかかわらず、パネリストから、公立の学校でアクティブラーニングが成立するのかといった不安が表明されるあたりは、見ている方がドキっとするほどスリリング。
そういうシンポジウムの懸念をよそに、かえつ有明の先生方が全員でアクティブラーニングの授業研究を主体的にしている様子が映し出されるのである。従来型の価値観から抜け出せない学校と、新しい教育をどんどん推進していこうとする学校の違いをさりげなく浮き彫りにする編集はお見事というしかない。
この番組は、多くの先生方や教育関係者が見たはずだ。2016年の中学入試の動向にも大きな影響を与えたであろう。「21世紀型教育を創る会」が4年前に発足した時には、ほとんど取るに足らないと思われていた小さな渦であった脱偏差値の教育。今年の春の段階でも、「全体的にみればまだまだ<アウェイ>」と感じられていた。その小さな渦が、大学入試改革とアクティブラーニングの動きが具体性を帯びてきたことで、一気に大きな奔流となり、従来の中学受験市場を変えようとしている。