文大杉並ダブル・ディプロマ・コース(BC州カリキュラム)の取材メモ

新年早々の1月4日、文化学園大学杉並中高(文大杉並)の青井教頭先生をお訪ねし、ダブル・ディプロマプログラムについてお話を伺ってきました。

インタビュー記事は21会サイトに掲載しましたので、ぜひこちらをご覧ください。

文化学園大学杉並 新しい女子校モデルのインパクト(1)

文化学園大学杉並 新しい女子校モデルのインパクト(2)

取材に先立ち、カナダブリティッシュコロンビア(BC)州のカリキュラムを確認するために教育省のホームページをチェックしました。よく編成されていて、コンテンツも充実、しかも誰でもアクセスできるようになっていることに驚かされました。

インタビューでも触れた「Educated Citizen」については、BC州の教育省では次のように表現されています。

( The citizens are )

  • thoughtful, and able to learn and to think critically, and who can communicate information from a broad knowledge base.
  • creative, flexible, self-motivated, and who have a positive self image.
  • capable of making independent decisions.
  • skilled and who can contribute to society generally, including the world of work.
  • productive, who gain satisfaction through achievement and who strive for physical well being.
  • co-operative, principled, and respectful of others regardless of differences.
  • aware of the rights and prepared to exercise the responsibilities of an individual within the family, the community, Canada, and the world.

IBの学習者像にコンセプトが似ていることは21会サイトの記事の中でも触れている通りです。

さらにBC州の新しいカリキュラムの特徴については次のように構成されていました(Education for the 21st Century より)。

 

Key features of redesigned curriculum

The Core Competencies

⁃ Communication

1. Connect and engage with others (to share and develop ideas)

2.  Acquire, interpret, and present information (includes inquiries)

3. Collaborate to plan, carry out, and review constructions and activities

4. Explain/recount and reflect on experiences and accomplishments

 ⁃ Thinking

⁃ Creative Thinking

1. Novelty and value

2. Generating ideas

3. Develping ideas

⁃ Critical Thinking

1.  Analyze and critique

2. Question and investigate

3. Develop and design

⁃ Personal and Social 

⁃ Positive Personal and Cultural Identity 

1. Relationships and cultural contexts

2. Personal values and choices

3. Personal strengths and abilities

⁃ Personal Awareness and Responsibility

1. Self-determination

2. Self-regulation

3. Well-being

⁃ Social Responsibility

1. Contributing to community and caring for the environment

2. Solving problems in peaceful ways

3. Valuing diversity 

4. Building relationships

⁃ Essential learning

⁃ Literacy and numeracy foundations

 

それぞれの項目を深追いしていくとキリがありませんが、全てBC州教育省のホームページから読むことができ、授業用コンテンツのサンプルまで提供されています。

中身については、ざっと追っただけですが、強く感じたのは、現場の先生がカリキュラム作りに参加するというスタンスが明確なことです。教育省が用意するのは、その枠組みや理論的な根拠であって、「この内容を教えなさい」といったような、内容についての制約はありません。

一方、日本の学習指導要領は、先生をカリキュラムの創造者としてよりも、実行者として捉えているように感じます。つまり、カリキュラムがダイナミックで変容するものではなく、固定的なもの、言い換えると、指示を列挙した指導マニュアルのようなものとして捉えられてしまっているように感じます。

育成するべき生徒像とその方法論を示して、あとは学校現場の形成的評価の蓄積によって大学進学のための準備教育を兼ねるという仕組みに日本は移行できるのでしょうか。そのためにはIBDPに匹敵するような、大学進学のための統一試験となるカリキュラムができないといけませんが、どうもその気配はありません。となると、IBやBCカリキュラム、そしてA-levelsやAPなど、欧米のカリキュラムのいずれか(もしくはそれに類似したカリキュラム)を履修するような状況となり、ちょうどマレーシアやシンガポールのようになっていくのかもしれません。

国際教養などの学部が人気なのはその兆候だと考えられますし、決して悲観することでもないかもしれません。その時に日本のカリキュラムの強みとして残っていくのは理数系や工学系、それに造形やファッション、日本文化・古典芸能などでしょうか。いずれに進むにしてもグローバルに考えることが必要な時代だと痛感します。