創造的思考の鍵はリスクテイク

創造的思考力を伸ばすためには、異質なものを組み合わせて新しいものを作り出すスキルが必要です。しかし、何よりも必要なものはそういったスキルを越えようとするリスクテイクの精神なのでしょう。そんな当たり前のことを、創造的思考のルーブリック(評価表)を眺めている時に気付かされました。

このルーブリックはAssociation of American Colleges & Universitiesという団体が出しているVALUE Rubricというものです。創造的思考の評価には、1) Acquiring Competencies, 2) Taking Risks, 3) Solving Problems, 4) Embracing Contradictions, 5) Innovative Thinking, 6) Connecting,Synthesizing, Transforming といった6つの観点が示されています。

項目は全てなるほどと頷ける内容ですが、中でも Taking Risksは、「まさにこれ!」と、膝を打ちたいような気分になりました。つまり、創造性というのは他人と違うことを恐れないことで初めて発揮される側面があるのですね。子どもがえてして創造的なのは、常識に囚われていないからです。

ですから、創造的思考を育むという観点から考えると、自由に何かをさせるというだけでは十分ではなく、すでに獲得したルールなり手法なり概念なりを打ち破ることを奨励する必要があるわけです。ルーブリックにリスクテイクの基準を組み込んでいるというのは、そう考えると非常に合理的だと言えます。

そんなことを小論文の授業で話していたら、とある帰国生が「リスクテイクが肯定的に考えられている社会では、失敗もまた評価されるけど、日本はどうでしょうか」と。「むしろ日本で美徳とされている価値を身につけていくことが合理的で、リスクテイカーは海外に出ることを選ぶのではないですか」と。返す言葉がありませんでした。その通りかもしれません。