【帰国生との対話ー5】 漢字、ありがとう!
以前にイギリスからの帰国生がインター校に入ったばかりの苦労話を聞かせてくれました。
その生徒は、10年生(高校1年生)でイギリスに渡り、それが最初の海外生活。それまで日本で英語は学んでいたとはいえ、イギリスのインター校では、授業も宿題も会話も分からない状態で座っていたとのこと。
そんな時に助けてくれたのは、同じくその学校に来ていた中国人の生徒だったそうです。まず英語で苦労していることを共有できたことで、精神的に楽になったといいます。その中国人との会話は英語でしていたので、英語の会話練習にもなったわけです。実際、英語を第2言語としている者同士のコミュニケーションは、英語ネイティブの人と直接話をするよりも気持ちが楽になり、話がしやすいという面があります。
そして、特に助けられたのが、授業で分からないことが出てきた時だったそうです。英語の意味が分からずに困っていると、その生徒がメモにさっと漢字を書いてくれて、渡してくれたというのです。字体は異なっていても、意味は分かるのでそのメモに大いに助けられたということでした。そんな話をしてくれた生徒から出た言葉が「漢字、ありがとう!」です。
この言葉には本当に実感がこもっていました。この生徒は家族とともに海外に暮らしていたので、家庭では日本語を使っていたわけですが、それでも学校で苦労している時の孤独感は相当なものであったのだと想像できます。
私たちはふだん当たり前のように漢字を使っているだけに、その有り難みなどあまり意識しません。しかし、同じ漢字文化圏の人とは筆談というコミュニケーションが可能になるという利点があります。グローバルなコミュニケーションツールである英語ほどではないにせよ、漢字も国を超えたコミュニケーションツールになり得るのですね。
もっとも、「手紙」のように、意味が全く異なってしまう言葉もあるようですから、そこは注意が必要です。