【2017年中学入試に向けたメモ②】-クリティカル&クリエイティブシンキングに注目集まる

2016年中学入試は、思考力テストがメディアに大きく取り上げられました。答えが一つではないオープンエンドの問いを入試に出題することは、アクティブラーニングを学びの中心に据える学校であれば、ある意味当然の帰結ですから、今後のトレンドになっていくでしょう。逆に言うと、入試問題が思考力型かどうかで、その学校のアクティブラーニング推進の本気度がわかるわけです。

 

思考力や表現力を問う問題は以前からありました。しかし、このところ注目されている思考力というのは、分析的なロジカル思考より高次の思考力で、「批判的思考/創造的思考」を指しています。分析的なロジカル思考は、前提が変わらないという条件下では合理的な思考ですが、間違った前提に気づかないまま「ロジカルに」進めるという誤りを犯す可能性もあります。ですから、前提を疑う批判的思考や、問題を把握し解決する創造的思考が大切になってくるわけです。

かえつ有明では、「サイエンス科」で批判的思考のスキルを学び、さらにそれを「プロジェクト科」では、創造的思考に結びつけていくプログラムが組まれています。かえつ有明では今年、思考力テストと難関思考力テストが実施されましたが、それぞれのテストが批判的思考と創造的思考を見ようとしていると考えることができます。もちろん、それぞれの思考力は相互に結びついているので、一つだけを取り出して見るというのは難しいのですが、重心をどちらに置いているかという点から言えば、大まかにそう考えて良いでしょう。

参考記事

従来は、創造性というのは、個人の資質や持って生まれた才能で、学校教育ではそれを伸ばすことは難しい、ましてや入学試験でそれを試すのは無理だと思われていたかもしれません。創造性を個人の才能として捉えている場合にはその通りです。しかし、最近では、集団の中でコラボレーションすることによって起こってくる創造性が注目されています。

上の表は、古代から中世、ルネサンス等の時代を経て現代にいたるまで、創造性のどの側面が注目されてきたかということを示しています(Approaches To Creativity: A Guide For Teachers by Orison Carlileより)。

この本の中では、創造性を9つの側面(1. Creativity as possession. 2. Creativity as product. 3. Creativity as personal genius. 4. Creativity as process. 5. Creativity as exceptional attributes. 6. Creativity as cognition. 7. Creativity as innovation. 8. Creativity as social. 9. Creativity as everyday )から考察しており、表から分かるように、8と9の側面が、現代の創造性を特徴付けていると考えることができます。

個人の資質だけでなく、集団内でいかに創造性を発揮していくかという点を見ようとしていたという意味で、かえつ有明の難関思考力テストが、グループワークのプロセスを評価の対象にしたというのは画期的だったと言えるでしょう。

さらに言えば、「かえつ有明知のコード」プロジェクトチームによって、知のコードに基づいたルーブリックがすべての教員に共有されつつあり、その中で行われる対話によって、子どもたちの能力をどのように評価するかという議論が行われているということも凄いことです。

最近の思考力テストが分析的なロジカル思考ばかりではなく、批判的・創造的思考に向かうのは、現行の大学受験よりも先にある、世の中の変化を感じ取っているからに他なりません。 

聖学院で実施された「思考力ものづくりテスト」は、80分で作品と解説文をつくるというユニークな出題で、朝日新聞にも取り上げられました。このテストでも子どもたちの創造的な思考力が発揮されています。

副校長の清水先生は、「21世紀型教育を創る会」の新春の鼎談企画で次のように語っていました。

PBLやアクティブラーニング、体験学習を通じた思考力や創造力の育成に取り組んできて、知識や論理以外に、信頼を創る力、自信を生み出す力、チームワークをつくることができる力まで身につけることができる手ごたえを感じています。であるならば、このような学びを通じていっしょに成長していこうというメッセージを共有できるような最適な入試問題を新たに開発したい。そして、そういう想いが受験生や保護者にも求められ、共感されるようになったのだと思います。まさに大転換期です。

この記事の中で、共立女子の児島校長先生も「合科型論述テスト」を実施した背景として、社会の変化について述べています。

今では、女性が社会進出する時代ですから、家庭力は学校に期待されていると思います。そうなってくると、生徒の成長物語は、知識注入型の講義型授業やペーパー試験だけでは、描くことが困難になってきたと言わざるを得ないでしょう。

 

工学院附属でも、図書館を使ったユニークな思考力テストが行われており、その様子が公式ブログに掲載されています。レゴを使った体験授業など、やはり創造的思考力を刺激するような学びを推進していることがわかります。

こういった思考力テストをリードしているのは、今のところ21会校が中心ですが、2017年度入試では、他にも幾つかの学校が出てくるのではないでしょうか。要注目です。