哲学授業研究ーかえつ有明もう一つのプロジェクト

ここに来て、かえつ有明の動きが軽やかです。これまで帰国生のHonors Classを担当し、絶大な支持を得てきたAlex Dutson先生の哲学授業の方法論をかえつ有明の教育全体に広げる目的で、研究会プロジェクトが動いていました。 

<--break->

この研究会の存在を教えてくれた田中先生は、帰国生担当としてDutson先生とタッグを組んで、かえつの帰国生教育の質を外に向かってどんどんアピールしています。そういった活動の結果でしょうか、先週土曜日に開催された帰国生説明会の来場者も昨年を大きく上回りました。それほど注目されているのがDutson先生の哲学授業です。

この哲学授業の本質を帰国生クラス以外の授業にも及ぼそうという試みがこの研究会の目的だということです。教科の専門家である先生が、その教科知識の体系をクリティカルに捉え返し、生徒の学びに変革を起こそうというわけですからそのインパクトは相当なものです。

すでにかえつ有明では「知のコード」プロジェクトが動いていて、教科という枠を超えた知をマッピングしなおす作業が進んでいます。そういった動きとどこかで連動していくことになるのでしょう。

Dutson先生は、問いのタイミングやその内容、全体の構成について自分のレッスンプランを軽く紹介しました。その後、早速社会科の木之下先生が模擬授業をすることになったのですが、木之下先生がそのことを知らされたのは、研究会の開始直前であったようです。ここには、受講者が自ら体験しながら、実地に知識を得ていくというタイプの学びが隠されていました。

試行錯誤の学び方に慣れない人だと、事前に準備ができないことに苛立ちを感じたりするのかもしれません。しかし、木之下先生は与えられた問いの構造を忠実に再現しながら、生徒役の4名の先生のディスカッションを見事にファシリテートします。

生徒役の先生同士の議論が白熱してくると、木之下先生は、いったんそこで模擬授業をストップ。ここでDutson先生ならどのような問いを出すのか、逆に問いを提出しました。問いかける者と答える者が入れ替わりながら、より良い答えを求めていくワークショップはまさに哲学授業さながらです。

一つの問いから発した考えは、次なる問いへと繋がっていき、社会科の木之下ならではの深い問いかけへと結実していきます。

「社会科という教科の中で、価値判断が関わる部分に、果たして踏み込むべきなのかどうか」

ここから先は、もちろんDutson先生の意見もあり、他の先生の意見もあり、議論は熱を帯びてきました。しかし、答えは先生が与えるのではなく、生徒自身が議論して「より良い答え」だと信じるところを尊重するべきなのではないかといった点ではどうやら一致を見たようです。

メタ認知のリフレクションを重視した学びの方法論ーいよいよ哲学授業が教科の中に浸透してきたという予感がします。