国際バカロレアをめぐる文科省と東京都の動向

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◇教育の国際化をめぐる議論の中で、文科省や東京都が「国際バカロレア」(IB)に言及することが最近増えているように感じます。

 

◇文科省は昨年「外国語能力の向上に関する検討会」を設置し、その審議のまとめの中で、「国際バカロレアレベルの教育を実施する学校の取組を推進する」とし、国際バカロレアレベルの教育を実施する学校を5年間で200校程度へ増加させることを謳いました。→詳細はこちら

 

◇東京都では、都立高校生に国際バカロレア資格を取得させようと「次世代リーダー育成事業」に取り組んでいます。

東京都は来年度から独自の次世代リーダー育成事業に乗り出す。都立高生ら150人を最長1年間留学させるほか、公立校としては全国で初となる国際的な大学入学資格「国際バカロレア資格」を取得できるコースを26年度から高校に開設し、海外の大学への進学を後押しする。(中略) 

 新設する「次世代リーダー育成道場」は、留学前に各界トップリーダーによる「リーダー育成プログラム」を実施し、リーダーとしての自覚やチャレンジ精神を 育成したうえで、最長1年間留学させる。若いうちから国際経験を積ませ、次世代のリーダーの育成につなげたい考えだ。24年度予算案に約2億円を計上した。(中略)

 「国際バカロレア資格」が取得できるコースは26年度から新設。授業はすべて英語で行い、外国人も受け入れる。都は外国企業500社以上を誘致する「アジアヘッドクォーター特区」を計画しており、外国人子弟の教育環境を整備することで、企業誘致にもつなげたい考えだ。現在はインターナショナルスクールを中 心に日本に22校ある国際バカロレア機構の認定校を目指す。認定されれば公立校としては初となる。  

都立高生を1年留学や国際バカロレア資格取得 都が次世代リーダー育成に本腰(産経ニュースより)

 

文科省においては、内向きになっている国内の高校生を海外に進学させるための「英語で学習するプログラム」という扱い、東京都においては「アジアヘッドクォーター特区」構想と合わせて、海外からの誘致をするための国際プログラムという扱い、とそれぞれIBを導入する目的は少し異なっていますが、どちらにも共通しているのは、IBの教育内容やカリキュラムについては何ら触れず、もっぱら国際化推進の手段という観点から導入を検討している点です。

 

「国際バカロレア」と言って想定しているのは、おそらく高校最後の2年間での履修となるIB Diplomaなのでしょうが、それほど簡単にIB Diplomaが国内の高校で履修可能になるとは思えません。教育主導というよりはどうも経済界の要望が反映されているのではないかと思えてきます。


◇文科省の方では、国際バカロレア「レベル」と書いてあるので、IB Diplomaを実際に実施しているかどうかは問題ではなく、後で何とでも解釈可能な文言でお茶を濁そうとしているのかもしれません。本気ならば一条校のしばりをこそ何とかしようとするはずです。


経済先行で教育を考えることが必ずしも悪だとは言いませんが、現状の産業構造や既得権益の延長でしか発想しないとすれば、経済もジリ貧になっていくのではないだろうかという気がします。