一橋大学 帰国生入試問題
◇2013年度の一橋大学帰国生入試は、フェルナン・ブローデル「歴史入門」からの出題でした。
◇「歴史入門」という書名は邦題で、原題は「La Dynamique du capitalisme (資本主義の力学)」とあるように、資本主義の発生のメカニズムをマックス・ヴェーバーとは全く異なる観点から分析している書です。
◇この著作の中の、「市場経済と資本主義」の違いについて書かれている箇所を抜粋し、文章内容の要約・説明をさせた後、小論文を書かせるという出題になっています。
1. 下線部(ア)の「2つの形態」について、それぞれどのようなものかを説明しなさい。(400字以内)
2. 下線部(イ)の「中心が移動」する理由について、筆者の主張を要約しなさい。(400字以内)
3.下線部(ウ)で、筆者は「自由」が「まったく神話というわけでも、まったく現実というわけでもない」と述べている。このことについて、筆者がそのように主張する理由を説明した上で、あなた自身の考えを述べなさい。(800字以内)
◇一般入試においては、小論文の出題は減少傾向にあり、慶應大学のいくつかの学部や医学部医学科、あるいは国立大学の後期日程などで見かける程度になっていますが、帰国生入試においては、本格的な小論文の出題が今なお主流です。
◇日本型の受験勉強をしていない帰国生に知識中心の出題をしても本来の潜在的な学力を測ることができない以上、思考力や、自分の意見を表現する力を試す小論文は、非常に合理的な選抜試験になるわけです。
◇海外の大学でも、エッセイやインタビューが入学のカギを握りますし、就職においても最後は面接が物を言います。グローバル人材育成が必要だという認識がある一方で、大学センター試験重視の選抜が横行しているという状況を何とかしないと「世界=経済の中心」からはどんどん遠のいて行ってしまうでしょう。
◇一橋大学の出題(素材文)からはそんなメッセージが聞こえてくるような気がします。