「21世紀に求められる能力」を考えるセミナー(1)

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去る10月22日(火)、富士見丘中で「21世紀型教育を創る会」(21会)の分科会の一つである「学習理論部会」が「思考力テスト部会」とコラボして、セミナーが開催された。テーマは「21世紀に求められる能力をめぐって」である。会の冒頭、まず富士見丘中高の大島先生から問題が提起された。 by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家

◇セミナーに参加して議論をしたのは、大島先生の他、有山先生(工学院)、本橋先生(聖学院)、菅原先生(八雲学園)である。議論の詳細は21会サイトに掲載されているので、次の記事を参照してほしい。

第1回 21会Webソクラテスセミナー「21世紀型学習をめぐって」(1)

第1回 21会Webソクラテスセミナー「21世紀型学習をめぐって」(2)

第1回 21会Webソクラテスセミナー「21世紀型学習をめぐって」(3)

第1回 21会Webソクラテスセミナー「21世紀型学習をめぐって」(4)

また、大島先生からの問題提起は、21会サイトの「論叢」の中からPDFでダウンロードが可能である。

◇本ブログでは、すでに書かれていることを繰り返すのではなく、セミナーでの議論を追いながら、他の学習理論、とりわけ国際バカロレア(IB)で取り入れられている考えなどとの関連を考えていきたい。

◇さて、大島先生の問題提起とその後の質疑では、まず「思考」とは何かということが話題になっていた。思考する上で必要となることが「問う」ことであるという。問いがなければ思考が始まらない。この問いを生徒自らが発するように持っていくために、教師は「問題提示」するのではなく、「問題場面の呈示」をするべきなのだと大島先生は指摘している。

 

◇この「問い」については、IBでは「Inquiry」という用語でしばしば登場する。10の学習者像の中にも「Inquirers」という項目が挙げられている。主体的に生涯学ぶためには、学びを楽しむスキルが大切。そのためにこそ、問うことを学びの出発点に置いている。

◇「問う」ことを教師の専有物にし、生徒に専ら答えることばかりをさせてきたのが20世紀型の教育だったのだと考えると、大島先生が「問題場面の呈示」という表現にこだわるのも合点がいく。

◇IB Diplomaのコア科目の一つ、Theory of Knowledge(TOK)でも、問うことが重視されている。IBに関して、日本で第一人者とも言える大迫弘和先生の著書「国際バカロレア入門」には次のように書かれている。

「TOK」の学習は、「疑問」が提示されることによって展開していきます。

「疑問文」、それが「TOK」の文体(スタイル)であり、それは遠くソクラテスの問答法に源を持つスタイルなのです。

◇「問い」について考えてみることで、私自身も今回新たな気づきがあった。当たり前だと思って「上から」眺めていると、多くのことを見過ごしてしまうのだろう。しかし、議論の最初の部分からこのペースでは、10回連載しても、第1回Webセミナーの議論に追いつかない。次の記事からはもう少しペースアップをしていきたい。