一橋大学帰国生入試 小論文問題

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一橋大学の帰国生入試が、一般入試の前期日程と同じ3月25日に実施された。帰国生の受験科目は一般受験生とは一部異なり、日本語小論文が大きなウェイトを占める。今年の小論文の問題を受験生が持ち帰ってきてくれた。

◇問題文の出典は、猪木武徳『経済学に何ができるか−文明社会の制度的枠組み』である。猪木氏の著作は、2008年度の一橋大学帰国生入試小論文でも、『自由と秩序−競争社会の二つの顔』が取り上げられている。経済的な側面に注目しながらも、経済以外の要因を含めて考察する氏の著作は、全学部共通で出題する一橋大学の小論文素材として、うってつけなのかもしれない。設問を抜粋する。

 1 引用部分全体の論旨を、あなた自身の言葉で要約しなさい、(400字以内)
2 下線部(A)に示されたトクヴィルの推論が現代社会に当てはまるか否か、あなた自身の考えを述べなさい。(400字以内)
3 下線部(ア)で指摘されている世代間における消費の「外部性」について、今日の日本または世界において観察される具体例をとりあげ、それについてどのような見解の対立があるか、また、あなた自身はどう考えるかを述べなさい。(800字以内) 

◇設問の構成や全体の字数についてはほぼ例年通り。問3で1200字が課される年もあるが、その場合は、文章の要約を含めているので、純粋に自分の主張を書く字数として、具体例も含めて800字というのは、受験生にとって特に抵抗はなかったであろう。
◇強いて気になる点を挙げるとするならば、「あなた自身」という表現が強調されている点である。特に今年は、問1の要約問題でも「あなた自身の言葉で」要約せよという指示が出されている。
◇通常、日本の受験指導では、「要約はなるべく文章中の言葉を使ってまとめる」のがいわば「お約束」であるが、海外で教育を受けてきた帰国生にとっては、「Summary は、paraphraseする」のが常識。
◇国内受験型要約の場合は、なるべく編集者である「私」を消し去り、原典に忠実にするスタイルで、下手に「加筆」されるよりましであるかもしれないが、文章理解が十分でなくても、「重要っぽい表現の羅列」ができてしまう。
◇一橋大学が、「あなた自身の言葉で要約しなさい」とあえて表現したというのは、帰国生にも妙な「受験テクニック癖」が忍び寄っているということを意味しているのかもしれない。