【帰国生入試問題研究ー3】京大経済2015年度小論文 第2問

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京大経済帰国生入試の2015年度小論文の第2問は、アメリカの哲学者マーサ・ヌスバウムの『経済成長がすべてか? デモクラシーが人文学を必要とする理由」から出題された。

問題文として抜粋された箇所の要旨は次の通り。

市民が教育によって批判的思考と省察の能力を持つことは、デモクラシーの安定のために不可欠である。一方で、近代の民主主義社会は強い経済と繁栄を必要としている。だからといって私たちは、利潤のための教育形態とよき市民精神のための教育形態のどちらか一方を選択するよう強いられているわけではない。強い経済は人間的な目的を達成する手段にすぎず、それ自体は目的ではないのである。

3000字程度の文章を読んだ上で、次の2つの設問に解答する。

  1. 傍線部1では、経済成長至上主義と、「ソクラテス的理想」とが相いれないとされ、その理由として、「数値化できる成果」には「自分の頭で考え議論する能力」があまり貢献しないと人々が判断するからとされている。人々はなぜそのように判断するのか、その理由を説明しなさい。
  2. 傍線部2では、「ソクラテス的な能力を標準テストで測定するのは困難です」とされている。この記述から推測できる「標準テスト」とはどのような内容のものであり、また、どのような種類の能力を測定するのには役立つと考えられるか、理由を含めて述べなさい。

社会が短期的な利益を求めるようになると、疑問を持ったり探求したりする知性は軽視されがちだ。その影響は当然教育にも及んでくるわけで、京大のこの問題は、実学系とみなされがちな経済学部志望の生徒にそのパラドクスを考えさせようという点で、意欲的な出題だと言えるのではないか。