【帰国生入試問題研究ー1】東大2015年度小論文
東大2015年度の帰国生入試問題が東大のホームページに公開されている。先に21会カンファレンスで大学入試問題を題材にして問いのレベルということについて議論をしていたばかりでもあったので、非常に興味深かった。
21会サイトの記事の中で工学院の高橋一也先生が語っているように、現状の入試問題の中にも知識偏重ではない問題もある。東大の帰国生入試の小論文課題は、そのような入試問題の典型例だと言える。
文科1類では、社会の制度設計に関するパラドクスに気付かせるような根源的な問いが発せられている。
また、理科1類では、相関関係と因果関係を切り分けるための視点が求められている。
他の学類の問題にしても、いわゆる「知識・理解・応用」を超えた問いのレベルであることが見て取れる。
このようなタイプの問題は、小論文の書き方といった技術だけで処理することはできない。「書く」技術に加えて「考える」技術が求められているからである。
21会で議論されていた「思考力テスト」ではIB型思考力を「ロジカルシンキング」「クリティカルシンキング」「クリエイティブシンキング」の3レベルに分けて考えていた。
上記の二つの問いに対しても、それぞれのレベルを意識しておくことで、解答はずいぶん変わってくる。何よりも社会科や理科の授業のあり方についてリフレクションを迫る良問と言ってよいのではないだろうか。
高校の授業現場から、20世紀型知識偏重テストに変革を迫るベクトルが必要であると同時に、21世紀型の思考力テストの側から、20世紀型授業に変革を迫るベクトルも必要であるのだが、帰国生入試問題は、あくまでも外国学校出身者に対する問題であるので、国内の高校や一般の予備校に対する影響力が少ないのが残念ではある。